インタビュー011|村上朗さん(株式会社ワーキング・ハンズ代表取締役)

インタビュー011|村上朗さん(株式会社ワーキング・ハンズ代表取締役)

「農業が好き」という人が作る食べ物は、安心だし当然美味しい。
「自然が好き」という人が紹介する遊びは、ワクワクしちゃうし当然楽しい。

まさに、好きに勝るものはなし。

決して近道を探さず、絶対にズルはしない。
スタート地点にやっと立てた今。気負うことなく歩みを進めている村上さん。

生きる「たのしみ」と働く「おもしろみ」を持っている人は、キラキラしている。

3年越しに叶った 第一次産業サービスの実現

沼津市街地から車で約60分。

伊豆が誇る自然、「海」と「山」を一望できる穏やかな景観の中に、伊豆自然基地「むらかみさんち」が提供する「貸農園(My農園)戸田ファーム」がある。

「第一次産業という根底をもとに、『自然』・『食』・『農』をテーマにした貸農園サービスを提供しています。」
農園の脇に腰をおろし、「むらかみさんち」の管理人、村上さんがにこやかに話し始めてくれる。

基本的にサービスは、会員制。
「むらかみさんち」の会員になり、村上さんをはじめ、スタッフが手厚く管理する「農園」のオーナーになる。

それは、サービスの入り口に過ぎず、この「貸農園」という農業体験をひとつのきっかけに、
伊豆にお客さんを招き、

  • 農園で収穫した野菜や伊豆の食材を使ったバーベキュー
  • 森で昆虫捕り、川で魚釣り、海釣りなどの自然体験
  • お米作り、稲刈り、お味噌作り、梅干し作りなどの食農体験
  • 昔の遊びや文化を感じることができる田舎暮らし体験
  • 村上さんチェック済!伊豆の隠れた観光スポット情報発信

などを通し、「伊豆」と「自然」の魅力を体感してもらう、というイベント事業を目指す。会員の方はもちろん、会員の方の家族・仲間、その他このサービスの趣旨に共感する人々が今、毎週のように伊豆を訪れている。

伊豆自然基地「むらかみさんち」のサービス詳細はこちらから。

ITから農業へ

実家が農家でも、農業を学んできたわけでもない。

大学卒業後、東京の金融関係企業へ就職。
その後、大学時代の先輩が立ち上げたIT関連の会社から声がかかり、2002年に転職。

「IT会社と言っても、自分は、プログラマーでもないですし、特にズバぬけて得意な分野でもありません。将来的なことを考えたとき、何か別のものに転換していきたいなぁ。と、常々考えていました。」

「それが、2006年。新事業の立ち上げとともに、この沼津に来て、プライベートで伊豆の自然に触れたときから、『自然に関わる仕事ができないだろうか。』と漠然と考え始めたんです。」

もともと「アウトドアが大好き」という村上さんには、漠然とした中にも、「自分の中でこのフィールドが、一番楽しくやれる。」と感じる、確かな想いがあった。

「まわりの仲間とそんな話をし続けるうちに、『この思いを形にできないか』、『具体的に何がしたいのか』と、模索し続け、自分自身が勉強・経験しながらスタートできる『農業』を始めました。」

「できたらいいねぇ〜。」、「楽しいよね。」そんな仲間同士の絵空事のような会話が、3年もの月日を経て今。「むらかみさんち」というひとつの形になって、一歩を踏み出した。

「3年かかりましたけどねぇ〜。やっとスタートできました。」
心からあふれ出す喜び笑顔が、私たちまでも幸せな気持ちにさせてくれる。

伊豆自然基地 「むらかみさんち」

「なんて言いますか、表現が難しいのですが・・・・。」

「『100%ビジネスです!』というイメージにはしたくはないんです。」

基本的には、サービスを提供し、お金をいただく。という商売の形式ではあるが、「むらかみさんち」が実現したい根本的な想いは、「伊豆自然基地」という言葉に込められている。

「我々には、『伊豆の自然を利用させてもらっている』という気持ちがあります。当然、自然は我々のものではなく、みんなのもの。みんなの自然を共有して、紹介して、多くの方が集ってくれたらいいなぁ。という想いがあり、『サービス』でも、『事業』でもなく、『基地』という言葉を選びました。」

主役はあくまでも「伊豆の自然」。
演出やサプライズで着色することなく、純粋に自然を愉しむ場所。
それが、伊豆自然基地「むらかみさんち」。

幼少期、何をするわけでも、何があるわけでもなく、友達がなんとなく集まってきた「ヒミツの基地」。
そんな、 誰にとっても、人と人・人と自然・心と心が直接触れ合える時間を過ごす場所であって欲しい・・・。そんな願いが込められている。

安心して口に入れられる 安全な食べもの

だから「無農薬・有機栽培」に徹底的にこだわりたい

この戸田ファームより1年早く整地を進めた御殿場ファームでは、ほとんどを輸入に頼っている「小麦」作りに挑戦し、地元の方の協力をえて、今年5月に初収穫を楽しんだ。

「手間と労力を惜しまず、畑を耕すところから全て自分たちでやりました。『なんでこんな大変なことを・・・』と、確かに思うときもありましたが、収穫された小麦を目にしたら、『あぁ〜。』って、いろいろなこと全てが報われた気がしました。」

「自給率が低いから、国産小麦を作って高く売るとか、国産小麦ってことだけを優先させて、化学肥料を使い、農薬をまいて大量に作る。なんていう、考え方はしたくない。」

小麦作りについて、そうきっぱりと、力強く断言する村上さん。

「大量に作ること自体が悪いとは思っていません。ただ、安心して食べられる、食べてもらえることを第一に考え、『無農薬・有機栽培』で作ろうとなると、おのずと収量は限られます。少ないパイの中で考えたとき、無理して手広くやるのではなく、まずは『僕の顔』・『僕のこと』を信用して任せてくれる人たちへ、正直にリターンしていくことからスタートさせ、それがよい形で広がっていけばいいなぁ。と考えています。」

実際に今年収穫した小麦は、約100kg。
製粉後、まずは村上さん自身とスタッフで楽しみ、「むらかみさんち」会員の方や協力してくれた方に送り、わずかな残りを通信販売した(完売しております)。

「手間を惜しまずに食べものを作りたい。このコンセプトを大事にやっていきたいんです。」

「品質」・「安心」へと関心がシフトし、生産者の顔が見える「食」が当たり前になりつつある中、近年再び自給率の低さに対する危機感が騒がれはじめ、収量性の高い農業が求められてきている。

収量が大切のは百も承知。
だけど今は余分なことは考えず「まずは自分たちの安心な食べ物を作る。」
そして「まわりの人にも安心な食べ物を食べてもらいたい。」
「むらかみさんち」では、そんな本来の「農の心」に重きを置き、作ること・食べること・食べてもらうことに、日々幸せを感じながら歩みを進めている。

本物の自然に触れたと実感してもらえるような体験を

毎月不定期に行われる「むらかみさんち」のイベント・自然体験

もともと少年時代からアウトドア好きだった村上さんは、今でもただ単純に自然の中にいるだけで楽しいという。

「でも、そういう人ばかりじゃないと思うので、まずは実際に『水に触れる』・『植物に触れる』・『昆虫に触れる』、何でもいいのでちっちゃいことでも、たくさん、いろんなことを経験して欲しいなぁ。と思い、イベントや自然体験を考えています。」

「本物の自然に直接触れたという実感を持っていただけるようなことを、発信できたら嬉しいですね。」

自身も伊豆育ちではなく、東京から伊豆に移り住んできた一人。
既存の情報に頼らず、実際に見て、食べて、触って体験し、自ら五感のアンテナをフル活動させ日々「これはいいっ!」と感じるもの探求している。

「僕も伊豆で育った人間ではないので、そんな外部からの目線で紹介するっちゅうことが、メリットになるのではないかなぁ。と思ってます。」

魚は「切り身」の姿で泳いでる!?

「虫が触れないとか、極端な例ですが、少し前にニュースで騒がれていた『魚が泳いでいる姿を知らない子供』、切り身の姿で泳いでいると思っているとか、そういうのを聞くと、自分がちっちゃい頃の常識では考えられないことも、逆に情報社会になったことによって、弊害が出てきているのかなぁ。と思います。」

「そんな子供たちに、『命そのもの』と言ったら大げさなのかもしれませんが、本物に触れる機会を与えてあげたいんですよね。手つかずの自然が残された伊豆でなら、それが実現できるんです。」

今年の夏。夜な夜なカブトムシ捕りに出かけた村上さん。夏休みに遊びに来た子供たちに捕り方や穴場をレクチャーするためだ。
「例えば、『カブトムシ捕り』にしても、人工小屋の中で養殖のカブトムシを捕まえてもらうというサービスの形もあるかもしれませんが、結局それは本物の自然じゃないですから。。。」

提供したいのは、「カブトムシ」ではなく、「カブトムシを捕まえる」という体験そのもの。手軽さにはない、作業の後の喜びと感動を味わってもらいたいのだという。

「僕がちっちゃい時に冬場に釣りに行って、何が楽しかったかと言えば、魚が釣れることも当然楽しいけれど、流木を拾って、子供たちだけでたき火ができたこと。普段は『火遊びをしたらダメ!』と、怒られるようなことが、自然の中ではできちゃうという、そういうわんぱくができることが、自然に出て楽しいことだと、自分としては思っています。」

わんぱくができること。
それが自然の醍醐味であり、「むらかみさんち」の管理人として、日々忙しく働く村上さんの原動力なのかもしれない。

今年はスタートの年 とにかく「チャレンジ!」 

農業にしても、イベント開催にしても、今年はチャレンジの年。

「農業に関しては、収穫ひとつにしても、実がつく前の間引きにしても、ベストなタイミングを知っていないとダメですね。今年はそれがうまくできず、思った程茎や葉が育たなかったり、収穫が遅れ結果的に収量が少なくなってしまいました。」

今年の夏は、きゅうり・なす・トマト・ピーマンを、現在は冬野菜として、大根・かぶ・白菜・キャベツ・ブロッコリーの栽培を開始している。

「まだまだ初めてのことばかりなので、いろいろ難しいなぁ〜。と感じることがほとんどです。そんな中でも、人間の力が足りなくてもすくすくと育ってくれる野菜たちを見ると、『野菜の生命力って、すげぇ〜なぁ。』と、感動します。」

農業は、1年1回。チャンスは1度きり。始めたばかりの今年だからこそ、失敗を恐れず、何でも挑戦しておこう!という精神の中で、育てることの喜び痛感する日々を楽しんでいる。

「子供たちに何かを聞かれたら、何でも答えられるよう、何でも知っておきたいという気持ちと、その中で『何が得意なの?』と聞かれたら、『これなら任せて!』という得意分野を持っておきたいという、ちょっと欲張りな気持ちがあります。」

今後に向けて、長期的な目標をそう語る村上さんの隠然たる想いは、野菜と共に着実に実ってゆくことだろう。

地元の方への感謝

「地元の方の理解と協力なくしては、何も進まなかったと思います。」

その言葉の通り、地元の方からは様々な知識やアドバイスをいただいている。さらに戸田ファームの野菜栽培には、近くの『戸田たまご村』からいただいた鶏糞を肥料として利用している。

「僕らが真面目にやればやるほど、地元の方はいろいろな事を協力してくださり僕らを支えてくれます。ホント、非常にありがたいなぁ。と、感謝する毎日です。」

2006年。想いを抱いた当初は、どうしてよいかもわからなかった。
そんな中いろいろな人に、実現したいことへの想いを必死に伝え続けた。
その声は、地元の方へ届き、少しずつ理解され、信用してもらえた。
そして、手を差し延べてもらえた。
ひとつずつ誠実に進んできたからこそ築くことのできた、地元の方との信頼関係のもと、「むらかみさんち」のサービスは成り立っている。

「今の農業の流れは『地産地消』という考え方ですが、僕らは僕らのサービスによって、ちょっとでも地域貢献ができればいいなぁ。と思っています。」

「むらかみさんち」のサービスを利用する人たちが、「むらかみさんち」だけでなく、そのほかの施設・店舗に立ち寄る。こうした来客者の観光によって、地域に少しでも報いることが、村上さんの願いのひとつにある。

目指すは、朝から晩まで「フル自然体験」

繁忙期でも、自由に遊びに来てもらえるために

「『いつでも、好きな時に遊びに来てください。』、サービスを利用する人に、そう言えるよう、将来的には宿泊施設を作りたいと考えています。」

それは、豪華な造りの旅館や設備万全のホテルではなく、「むらかみさんち」スタッフの力で造る「ログハウス」なのだと言う。

「せっかく伊豆に来て、農業や昆虫捕り体験をしていただいた締めとして、我々の手作りログハウスに宿泊してもらい、『夜は星が見えますね。』とか『ログハウスの前でたき火をして、キャンプファイヤーもできます。』といった、朝から晩までフル自然体験みたいなサービスが提供できたらいいなぁ。と、思っています。」

「でもただ単純に、自分がたき火をしたいだけかも・・・。よくお酒を囲むと打ち解けられるって言いますが、僕は、たき火の方が、そういう力が強いんじゃないかって感じてます。」

来客者とたき火を囲み、農業の裏話や昆虫採りのテクニック、さらに話は弾み子供の頃のやんちゃ話を、楽しそうに語る村上さんの姿が目に浮かぶ。

仕事という枠を超えた「むらかみさんち」のサービスは、一度訪れた人に、
「そろそろむらかみさんちに遊びに行くか!」、そう度に思わせる魅力がある。

それは、「伊豆」や「自然」に対してだけでなく、村上さんが持つ「温かみ」をなくしては築いていけないもののような気がする。

最後に・・・。今、ワクワク・ドキドキしていますか?

今ですか。。。
そうですねっ。今は、1日1日。この「むらかみさんち」のサービスを一緒にやっていこうというメンバーと話をしながら、1つ1つを進めて、イベントをやったら、反省をして、次は何をやるかを考えて。

考えてみても、正直考えが一週間経ったらガラッと変わるというか、あのときは思いもしなかった展開がみんなのアイデアから出てきたり、出てきたアイデアをもとに、またそこから新しいアイデアが生まれたり。。。

3年前は、飲みの席の「夢話」、現実逃避みたいに思えていたことが今。本当にリアルに実現できることだという感覚を持って、話をできていることが、今一番楽しいことだと思います。

取材日:2009年10月 (記事:中村)

村上さんのプロフィール

1971年(昭和46年)6月、福岡県生まれ。残念ながら独身。大学卒業後、リース会社に就職し、経理、営業を担当。2002年に、大学時代の先輩が設立したIT関連の会社に転職。モバイルコンテンツの運用ディレクションを担当。2006年に沼津に移り住み、伊豆の魅力にどっぷりはまり、自然の中で生活していくことを決意し、現在に至る。

インタビューコメント 〜村上さんとお会いして〜 eひと編集長 中村

オトナになっても、キラキラとしていられる人の魅力。

村上さんにお会いし、強いパワーを穏やかに放出し続ける「元気玉」をいただきました。

夢を口に出し続けることの大切さ。
まずは今の自分にできることから歩み始めることの大切さ。
欲張らず、気負わず、叶えたい夢だからこそ、自分にも周りにも誠実に歩んでいく。

そんな村上さんの姿に、胸が高鳴り、「私も頑張らなくちゃ!」とワクワクさせられました。

取材中に収穫された大根とカブをお土産にいただきました。
村上さんが作った野菜。そう思うと、なんだかとっても温かい味がしました。ご馳走さまでした。
お忙しい中、ありがとうございました。

インタビューコメント 〜村上さんとお会いして〜 eひとスタッフ 中野

「むらかみさんち」は、ひとことで表現するなら「村上さんの基地」です。
だからこそ、村上さんの「基地」へのこだわりは半端ではありません。

村上さんの仕事場というイメージは微塵もなく、遊び場のような雰囲気で、「むらかみさんち」を訪れた私たちは、ワクワクせずにはいられませんでした。

「あの展望台からの眺めはいいですよ!」
「あっちには滝があるんですよ」

少年のようにキラキラした笑顔で「基地」を案内する村上さん。
伊豆の自然の魅力を伝えるスペシャリストといっても過言ではないと思います。

お忙しい中インタビューのお時間をくださり、採りたてのお野菜までお土産にいただきまして、ありがとうございました。

株式会社ワーキング・ハンズ  『伊豆自然基地 むらかみさんち』 会社情報

所在地 〒410-0801 静岡県沼津市大手町5-9-21
【むらかみさんち】
戸田ファーム : 〒410-3402 沼津市戸田3282-1(たまご村すぐ上)
電話番号 055-964-2002
営業時間 10:00〜19:00
事業内容 農畜産物の生産販売、食料品製造販売
WEBサイト むらかみさんち http://murakamisanchi.com/
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http://e-hito.org/m/011/v11-1.php

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