インタビュー008|桜田賢介さん(株式会社ワーキング・ヘッズ・アドバンス代表取締役)

インタビュー008|桜田賢介さん(株式会社ワーキング・ヘッズ・アドバンス代表取締役)

大学や専門学校を卒業して専門知識を学習した人であっても、志望の職種に就けない人や、希望する企業に入社できない人は大勢いる。
そんな中、学歴や経験に関係なく、入学から6ヵ月でITエンジニアとして就職できる、そんな夢のような学校が沼津にはある。

実際、魚市場で働いていた男性が現在はITエンジニアとして活躍していたり、パソコン未経験で入学してきた男性も、努力した結果、この10月からIT関連会社への就職が決まっていたりする。

ただし、その夢を自分でつかみ取ろうという”やる気”だけは必須である。

求める人材がいない

IT技術の発展と人材不足の現実

桜田賢介さん近年、IT技術の発展に伴い多くのIT関連企業が設立され、全国にIT化が広がった。その反面、IT関連の教育の場はまだ少なく、優秀な人材が不足している。

急成長したITの波に乗り、桜田さんは大学の先輩と共に東京で起業した。
それが、WEBシステムの開発を行う『株式会社 ワーキング・ヘッズ』である。

最初は知り合いの紹介などを社員として採用していたが、それでも求人が追いつかず、求人サイトや求人誌で募集しても良い人材が見つからない。仕事はあるのに人手が足りないという問題に直面していた。

「それなら自分たちで育てちゃえばいいんじゃないか。」
そう考えたのである。

※株式会社ワーキング・ヘッズの業務内容の詳細はホームページよりご確認いただけます。

水と空気と魚がうまい!

横浜出身の桜田さんが沼津に起業した理由

大学卒業後は東京の会社に就職したが、もともと横浜で生まれ育ったということもあり、東京は子育てするには向かないんじゃないかという思いを持っていた。

”人材育成事業を始めたい”
”どこかの地方都市にワーキング・ヘッズの支社をつくろう”

桜田賢介さんこれらをほとんど同時期に考えついたということもあり、どこがいいかと考えていた。

「僕らの業界の仕事は東京にいっぱいあるし、東京からあまり離れていない所がいいなぁというのがあったんです。北に行くなら宇都宮、水戸、高崎とか。西に行くなら沼津。」

ゴルフ好きな桜田さんは、御殿場や箱根方面でゴルフを楽しんだこともあり、”富士山はキレイだなぁ”とか”空気がやわらかいなぁ”と感じていた。その上、大学時代の先輩がたまたま沼津にいて、地元の方を紹介していただいたというのもあり、沼津に決めたのである。

それから数ヵ月後、沼津市大手町に『株式会社 ワーキング・ヘッズ・アドバンス』を設立した。

株式会社 ワーキング・ヘッズ・アドバンス

「静岡県内の就労支援」と「IT業界へ人材輩出という業界貢献」

ワーキング・ヘッズ・アドバンスは、ITエンジニアを育成する学校『ワーキング・ヘッズ・アカデミー』を運営している。

  • 自分たちがきっかけとなり、静岡県東部がIT産業を核として活性化することを目指す
  • IT業界に優れた人材を提供し続けることで、業界のさらなる発展に貢献する

ITエンジニアを生み出し続けることにより、沼津および静岡県東部の地域活性に貢献できると桜田さんは確信している。

ワーキング・ヘッズ・アカデミー

企業が欲しがる人材に育てる

『ワーキング・ヘッズ・アカデミー』は就職に強い人材を育てる、就活不要のITエンジニア育成学校である。

入学前には面接や適正試験などがあり、お金を払えば誰でも入学できるカルチャースクールや習い事感覚では、入学することはできない。
一番重要なのは、”やる気”があるかどうか、”目つき”を見るのである。

「企業的には、今現在ただ単に技術がある子よりも礼儀正しい子とかやる気溢れる子の方が欲しいと思いますので、そういう子に育てています。」

桜田賢介さん冒頭にもあるように、やる気さえあれば高校卒や未経験者であっても、6ヵ月でIT関連企業に就職可能なレベルに成長できるが、いくら専門学校や大学を卒業した人であっても、やる気のない人材を欲しがる企業はないため、入学を制限しているのである。

「僕らは企業なので、”企業が採用したいと思える人”を常に実感しています。その普段からの意識が、企業が求める人材を育てられる要因のひとつなのだと思います。」
「スキル的には半年なので、完璧なプログラマーとまではいかないですけど、数年後には優秀な人材に成長していると思っています。」

4ヵ月のカリキュラム+2ヵ月のインターンシップ

クラスは少人数制を取り入れているため、生徒全員に指導が行き渡り、現役エンジニアが行う即戦力指導によって、技術の進歩が激しいIT業界の旬の情報やスキルを得ることができる。

また、社会人としてのビジネスマナーやコーチングスキル、プレゼンテーションスキルも、現役エンジニアが効率よく教えていくため、4ヵ月という短期間のカリキュラムでも身につけることが可能なのである。

「どうせ技術は進歩して、新しい知識が必要になったりやり方が変わったりするんだから、根っこをきちっと、基礎をしっかり身につけさせます。」
「あとは変化に対応できるよう勉強しなさい、キャッチアップしなさいって、”仕事に就くにあたっての心構え”みたいなものを特に重点的に教えています。」

このような4ヵ月のカリキュラムが終わると、その後2ヵ月は、WEBシステムの開発を行っているワーキング・ヘッズにて、インターンシップをしながら実務経験ができる。学んだスキルを実際の現場で試すことで、確実なスキルアップやキャリアアップを実現している。

かわいい子には旅をさせろ

自分たちが育てた生徒を手放すということ

入学の際は自分たちが欲しい人材を選び、自分たちが欲しい人材に育てるため、卒業後の就職で手放すのは惜しいと思うのが通常であるが、桜田さんは、しっかりとその先を見据えていたのである。

桜田賢介さん「卒業して、どこか東京の企業に就職したとして、5年くらい経ったら、たぶん戻ってきて起業する子が出てくるであろうと、卒業生の中にはそういう子がいるという感じはしています。」

「卒業してから5年間、沼津のワーキング・ヘッズで過ごすよりも、たとえばどこか東京の企業に就職して、”将来起業したい”とか、”いつかは地元に戻りたい”とか、そういうことを考えながら仕事をする方が、5年後の伸び具合は大きいと思うんですよ。」

「東京で5年間働けばそれなりのコネクションや力がつくと思うので、その子が将来沼津に戻ってきたとき、起業するかもしれないし、しないにしてもITエンジニアとしての力をつけて戻ってくるので、地域が活性化するんじゃないかなぁって、すごい期待しているんですよ。」

「起業する子もいるだろうけど、サラリーマンがいいっていう子には、”是非うちに来なさい”という感じで迎えるつもりでいます。」

ワーキング・ヘッズ・アカデミーの”卒業生に対するアフターフォロー”は、ビジネスという感覚よりも、商売を超えた地域貢献の域にある。

エコオフィスデー

経営者としての責任、環境への関心を波及する。

子どもが生まれてからECO(エコ)について少しずつ意識し始めていたというのもあるが、起業してから会社としての社会的責任について考えていた桜田さんは、2008年の夏、”エコオフィスデー”を開始した。

「特にうちの会社は僕より若い人しかいないので、僕が自信を持って何かをバーンと言えば、社員や生徒で20〜30人分、直接的な波及力があると思っています。」

『エコオフィスデー』
・毎週金曜日(終日)オフィスの冷房を完全に切る。
・使用できるのは、扇風機とうちわ。
・暑さに耐えうる軽装で出社する。

「人間は基本的に自分のために生きてると思うんですよね。それが結婚して子どもができたりすると、彼らのために頑張ったり働けると思うんですよ。」

通常はここで留まるが、桜田さんはその先のことも意識している。

桜田賢介さん「たぶんその先には会社があって、地域があって、日本があって、地球があると思うんですけど、人間いつもいつもそんな素敵なことばっかりは言ってられないじゃないですか。僕も全然できていないんですけど、はっと気付いたときには意識してそういうことを考えたいとは思っています。」

「僕は会社を経営しているので、会社のために何かをするのは当たり前じゃないですか。地域のために頑張るぞ!とかそういうことを言うのも、立場的に言いやすいと思うので、そういうことを言うのは大事だなぁと思って。」

こういった試みをすることにより社員に何かを植え付けることができるのであれば、ワーキング・ヘッズ・アドバンスをきっかけとしたエコ意識の波紋が広がるのではないかと考えているのである。

新しいものを取り入れる

素敵な人、素敵な本と出会うこと

桜田さんは、限られた時間の中で、新しいものを取り入れるために意識していることがあるという。

「なるたけ素敵な人に会いたい。」 「なるたけイケてる本がいい。」

『逆説の日本史』
桜田さんが最近おもしろいと思って読んでいる本である。

本屋で良さそうな本を探すこともあるが、紹介していただいた本を読んで情報収集することもあるのだという。

ゴルフとお酒

「人と人が仲良くなるツールがいくつかあると思うんです。」
「僕の場合はゴルフとお酒。」

桜田賢介さんお酒を飲めない人でゴルフ好きな人がいれば、一緒にゴルフを楽しむ。お酒を飲める人であれば、できるだけ長い時間同じ人とずっと飲むスタイルをとっている。

そうやって同じ人と5、6時間一緒に過ごしたり、いろんな話をしたりするうちに、お互い仲良くなったり興味を持ったりする。それが仕事につながることもあるが、桜田さんにとってお酒やゴルフは、仕事のためのものではない。

「仕事の話は、他の社員が昼間打ち合わせの時間にすればいいことなので。」

そう笑い、

「日本のビジネス慣習として、昼から飲んでもいいってことになれば、僕はすごい仕事ができますよ。昼はゴルフで夜はお酒。昼もお酒で夜もお酒。なんてね。」

と、ここまで、完璧な知性と上品さを漂わせていた桜田さんが、やんちゃな少年のような一面を私たちに見せた。

自給自足を目指して

安全なものを食べたい、食べさせたい。

桜田さんは、自宅の庭で、白菜、小松菜、ほうれん草、すいか、とうもろこし、トマト、タカノツメなど…いろいろな野菜を育てている。

「もともと、安全なものを食べたいなっていうのがベースにあって、何もわからないのでとりあえず自分で作ってみようと思いました。収穫量はほんとに少ないですけどね。」

野菜を選ぶ基準は、奥さんは料理に使える野菜という観点、息子さん(5歳)はホームセンターで種の袋を見てピンと来たものをチョイスする。
(ただその時の気分という説もあり)

家庭菜園での様子は、桜田さんのブログ『さくログ』にて紹介されている。

「茄子ってスーパーで1つ30円くらいで売られていたり、トマトも安く売られていますよね。あんなツルツルなトマトなんて作れないですよ!すごい手間がかかるのに…。大変だなぁって思いました。」

安いのが当たり前だと考えられている野菜を実際に作ることで、農家の方々の苦労がわかる。桜田さんの悔しそうな表情を見て、私も改めて野菜のありがたみに気づくことができた。

ビジネスとしての農業

御殿場の広い土地に小麦畑を作りたい

桜田さんは、御殿場にある600坪の使われていない田んぼをお借りして自ら耕していて、10月には小麦の種を蒔く計画を立てている。
社員さんたちは自由参加でお手伝いすることになっている。

桜田賢介さん「来年の6月に収穫することができれば、みんなで収穫祭をしたいですね。」

また、みんなで力を合わせて農作業をすることで、チームワークや社内のまとまりも期待できるという。

現在日本では、小麦の自給率は10%程度であり、主に、アメリカ、カナダ、オーストラリアからの輸入に頼っている。

「手間暇はかかるけど、いい農作物を作れば買ってくれる人はたぶんいると思うんですよ。」

桜田さんが作る小麦は大量ではないが、国産小麦の需要は必ずあると見据えている。将来的には小麦だけに留まらず、手間暇のかかるウコンやゴマ、ヤーコンなどの栽培をすることが理想であると桜田さんは語る。

「ビジネスの視点から始めちゃうと、効率化を優先してインチキしたり農薬バンバン撒いたりしちゃいそうで、危ないし良くないなぁって思うんです。だから根本は、”自給自足”であったり、”美味しくて安全なものを食べたい”というのをベースにして、そこから外れないように意識しながらやっていきたいと思っています。」

最後に・・・。今、ワクワク・ドキドキしていますか?

「10月からの小麦はワクワクしていますね。他にもいろいろ作って、いろんな人と共有したいって思っています。」

「あとはやっぱりアカデミーの卒業生。1期生が卒業してからずっとワクワクしています。誰か早く沼津に帰ってこないかなぁって。アカデミーに関わっている社員たちもみんなそうだと思いますよ。」

アカデミーを卒業して、東京の企業に就職した人たちの何割かが地元沼津に戻ってくるのではないかと考えると、そこから沼津のIT産業の活性化が期待でき、桜田さんが目指す”静岡県内の就労支援”と”IT業界へ人材輩出という業界貢献”が実現するのである。

取材日:2008年9月 (記事:中野)

桜田賢介さんのプロフィール

1971年(昭和46年)11月、横浜市生まれ。家族は、妻と1男1女。大学を卒業後、携帯電話会社(現ソフトバンクモバイル)に入社し、営業、コンテンツ企画を担当。2000年に現社長の茂木さんとワーキング・ヘッズを設立して専務取締役に。2006年、東京から伊豆の国市大仁に移り住み、ワーキング・ヘッズ・アドバンスを沼津市大手町に設立して代表取締役に。現在は東京オフィスよりも多くのスタッフを抱える大所帯に。

インタビューコメント 〜桜田さんとお会いして〜 eひとスタッフ 中野

石油価格の高騰、教員資格問題、総理辞任など、世間は自分のことで精一杯。

自分のため、家族のため、会社のため。
ここまでなら私も頑張れますが、地域のため、IT業界のために考えて実行している桜田さんの、視野の広さとキャパシティの大きさに圧倒されました。

私には、やる前から”無理”だと感じて、挑戦しないでいることがたくさんあります。
だけど、”達成したい”という強い想いと、目標をしっかり定めて実現に向けて努力すれば、達成は不可能ではないのかもしれません。

こんなすごいことを実現しているのも人間。私も人間。
なんだか可能性が広がった気がします。

ありがとうございました。

株式会社 ワーキング・ヘッズ・アドバンス 会社情報

所在地 〒410-0801 静岡県沼津市大手町5丁目9番21号マルトモビル4F
電話番号 055-964-2002
FAX番号 055-964-2003
事業内容

・ITエンジニア育成
・webシステム開発
・人材派遣、紹介

WEBサイト ・株式会社ワーキング・ヘッズ・アドバンス
 http://www.wh-advance.jp/
・ワーキング・ヘッズ・アカデミー
 http://www.wh-academy.jp/
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