インタビュー004|古井誠さん(株式会社高池代表取締役社長)

インタビュー004|古井誠さん(株式会社高池代表取締役社長)

「『趣味は仕事です。』って言うヤツ。いやな感じするでしょ?でも、僕がまさにそれっ。僕は製造業がすごく好きなんですよ。」

できる・できないではなく、やるかやらないか。そして、「やる」と決めたならどう楽しんでやるのか。諦めず、立ち止まらず、失敗さえも「楽しさ」に思えるほど、古井さんの「ものづくり」に対するアイデアは止まらない。

社長に就任し、「つくる立場」から「経営の立場」へ舞台を変えて、湧き出るアイデアを世の中に発信し始めた。

ひらめきから生まれる「ものづくり」

「インターネットの中に営業所を作る」

古井さんがひらめいたこのコンセプトによって、2005年に運営をはじめたオーダーハーネス加工のサイト「haisen.jp」。インターネットを、『売りたいものを売る場』ではなく、『お客さんのニーズを仕入れる窓口』として活用している。このサイトが現在、営業が不要となる程の受注ウエイトを占めている。(株式会社高池が運営する電線・コネクタ加工工場の直販サイト「haisen.jp」サイトはこちらから。)

ハーネスとは、電気配線。機器をつなぎ電気や信号を伝達する、人間に例えれば血管や神経にあたり、機器の性能・動きを左右するとても重要な役割を果たすものである。株式会社高池では、このハーネスの製作・加工をはじめ、試作、開発品の製作や配線方法のアドバイスなどを請け負っている。人間の血管や神経に違いがあるよう、当然機器によって配線方法や配線レイアウトは異なる。限られた機器面積の中でどう効率よく、納まりよく配線やレイアウトするかは、技術・経験のみならず、センスが必要とされるものである。

「目指したのは『お店』ではなく、『営業所』。お店に陳列された既存品を選んでもらうのではなく、お客さんが何を欲しがっているのか、それを見つけて、それを作るというコミュニケーションが発生する『ものづくり』がおもしろい。」

ふっと考えてアイデアが生まれる それがおもしろい

「これってどこに頼んだらいいの?」

電磁カウンターを扱う前職場「東京計数工業株式会社」の仲間である菊池さん(現在株式会社高池取締役)、中村さん(現在株式会社高池取締役)と共に、仕事の中で生まれた疑問をきっかけに、「高池」を創業することとなる。

「複写機・自動販売機、ゲームセンターのアーケードゲーム等で使用されるのが電磁カウンター。ある日、この電磁カウンターの電気配線をしよう!となったとき僕たちの中で『これってどこに頼んだらいいの?』って、困ったしまったんです。」

「そこから、僕たちが困っているんだから、みんなも困っているんだろうなぁ。という考えが浮かび、みんなが困っていることをやればおもしろい仕事ができるんじゃないか。と思って、始めちゃったんです。」

前職で開発を進めていた電磁カウンターのシェアが小さく、「ものづくり」としてある程度のところまできていると感じていた3人にとっては、新たな製造業の道が開けた瞬間であった。

潜在的な問題点やニーズを満たす製品づくりは、まさに「ものづくり魂」。これを「おもしろい」という観点から起業してしまうのだから、古井さんの「ものづくり」に対する惚れ込み様は、中途半端でない。

隙間

「今時、ハーネスなんてやるヤツいないよ!」

起業当初、そう周りから口をそろえて言われるほど、当時このハーネス業界は海外での量産が主流とされ、商売としてはある程度熟れてきている業界であった。

「僕らは初めから、『量産や数物』というのは頭になくって、『小ロットでやっていこう』という意識でした。」

今でこそ、小ロット・試作、開発品に対応する、いわゆるオーダーハーネス会社が増えているが、当時はまさに「ハーネス業界の隙間」ともいえるアイデアだったに違いない。そこには、働くということに自らの「おもしろみ」を追求する古井さんの考え方と、お客さんが本当に要求している「困っている問題点を素早く解決させ、結果をだす製品」を作り出す「ものづくり」への考え方がルーツとなっている。

インターネットに対する考え方

インターネットは売りたいものを売る場ではなく、相手のニーズを仕入れる窓口として活用する。

「haisen.jp」サイトのコンセプトに手応えを感じた今。自社がどんな考え方で、どんなことをしているか発信したい!そんな欲求から7月に立ち上げた「株式会社高池」のサイト。「社員参加型のホームページ」として各ページの原稿を各社員がそれぞれの言葉で作成するなど、これもまた「おもしろさ」を追求する古井さんならでは趣向が凝らされている。(古井さんをはじめ、株式会社高池で働く人たちの想いが込められた「株式会社高池」のホームページはこちらから。)

「最近思うのは、ホームページって僕らのような中小企業が、コマーシャルをうてる場だということ。今回のサイトでは、僕らの考えを前面に出したとき、それを見てみんなはどんなことを考えるのかな?どんな反応があるのかな?って、ホームページの中で何が起きるのか、それが楽しみで仕方ない。」

お客さんの考えを仕入れる「haisen.jp」サイトとは、180度思惑の違う自社の考えを発信する「株式会社高池」サイトでは、自身でブログも書いている。

古井さんの想いが凝縮された企業方針には、古井さんの「ものづくり」に対する意識の高さが伺え、「こんな会社に製品を頼んだら、いいものを作ってもらえるはずだ。」と、思わせる言葉がならんでいる。

 

「会社の動きにスピード感がある。」

全て項目について興味をそそるところだが、今回はこの言葉について伺ってみた。この一文には3つの意味があると言う。

オーダーハーネス 見積もりのスピード感

「例えば、買い物に出かけたとき欲しい目的のものがなかったとする。」

「納期を訪ねるとA店では『1週間』、B店では『1ヶ月』かかると言われる。どうしても欲しい時は、10円でも高くてもA店で購入を決めてしまう。そんな人の心理ってありませんか?それと同じ事が製造業でも言えるんです。」

これは、古井さんいわく「スピードにお金を払う」ということ。

「今は豊富な情報があるから、お客さんは見積もりを出す時点で、ある程度この製品はこれぐらいの価格でできるだろうという予測値を持って、納期と価格の兼ね合いで相見積りを数社に依頼すると思います。」

「A社で見積もりに1週間かかるところを、僕らは電話なら口頭、複雑な場合は当日中に。ホームページからであれば、当日中、複雑な場合は次の日の午前中に見積もりを出す。」

「例えばお客さんが、『この製品は500円くらいで作れるだろう』と予想を立てていて、僕らが当日中に出した見積もりが500円だったら、1週間A社の見積もりを待つよりも、その日のうちに僕らに発注をかけてくれるケースが多いですね。」

オーダーハーネス 納期のスピード感

「やっぱりどんな会社でも在庫は持ちたくないよね。」

「お客さんにとって、2週間の納期を1週間に短縮できれば、在庫を持っている期間が半分になるのだから、納期の早さは喜んでもらえます。お客さんの立場にたって、どの程度の納期を要求しているのか、そしてそれに応えられるかを意識しています。」

「逆に、僕らの立場としては『納期のスピード化』を意識することで、技術面や精神面でかなり鍛えられている部分があります。以前は2週間かかっていた仕事を1週間でできてしまう仕組みを実現できれば、その分他の製品を作る時間や製品について考える時間がとれるわけですから。」

ひとりひとりの判断力 決定のスピード感

「海の中で、鰯(いわし)がいっぱい泳いでいる。」

「そこに大きな魚が来たとするよね。そのとき、鰯(いわし)というのはいっぺんに逆方向へ方向転換し向きを変えて逃げる。ところがある程度体が大きい魚になると『あっ!』と感じてから、ぐるぅ〜っと向きを変えるわけだよね。そうすると、大きい弧を描いて逃げることになるから、追いつかれて食われちゃう。」

「これは僕の考え方なんだけど、各自・各個人がいかに判断力を持つか、それが会社のスピードを決めていると思っています。」

「会社が方向性を決めた時、『こっちへ行くよ』と言ったら、『行きましょう!』と自分の判断で方向を変えられる。そういうものが欲しいと思っています。」

 

一言に「スピード感」と言えど、古井さんの頭の中にはいろいろな構想がある。 「会社の動きにスピード感がある。」この言葉には、何事に対しても「なにもしないで止まっているという時間がない、そんな動き続ける会社でありたい。」そんな想いが込められている。

決断力は経験値、経験値は失敗の数につながっている

製造業だけに関わらず、どんな仕事にも「目標達成」のための選択肢が数多くある。

「僕は社員のみんなに『とにかく失敗しろ』と言います。数多くある選択肢の中で、どれが正しいのかはやってみないと分からない。一番大切なことは、まずどの選択肢を試すのか決めて、とにかくやること。」

「判断力というのは経験値であり、失敗の数なのです。僕と、若い社員。同じ事に対して判断が早いとしたら、僕の方が長くやっている分いっぱい失敗しているから。そして、失敗に対して『なぜ失敗したのか』解決してきているから。」

最短の道を頭で考え安全を確保して進むのではなく、自分の頭に浮かんだ選択肢は試さずにはいられない。考えている時間があるならば実際に試し、失敗したならば、次の方法へ進めばいい。そうやって学び、よいものができたときの「やっとできたぁ〜。」という喜びを感じることができる。

株式会社高池がお客さんに納品する製品は、実際には3回失敗して、4回目にやっとできた製品かもしれない。3回失敗した分、失敗から学んだ改善がなされたよりより製品であることは間違いない。「できたから、これでいい」ではなく、とことん納得できる満パワーの詰まった「作品」とも言えるような気がする。

失敗という経験は、選択肢減らし知識にしてくれる。だから、失敗さえも楽しんでいられるのだと言う。

ものづくりの最大の魅力

「今一番のストレスは、自分が作れない立場になってしまったこと。作っている時間がないんだよ・・・。」

本当に残念そうなトホホ顔を見せる古井さん。「社長」という立場以上に魅力を感じる製造業の魅力は「一つの製品を作る」ということに対して、みんながいろいろなことを考えして作ることにあると語る。

「製品を作り上げる過程の中では、その人の立場や年齢は一切関係なく、みんな平等な立場で意見や考えを言える。できる人間、作れる人間に従うしかない。この方法がいい。あれはだめだ。と、そう言い合って一つのものを作るという共通の目的に向かっていることが楽しいですね。」

実際によく若い社員から「社長、そのやり方じゃだめですよ〜。」などと、ダメ出だしをされてしまうこともあると言う。

使えるものでなければ、商品でもなんでもない。どうやって作ろうかと考えた時上下の立場関係ない職場環境が用意され、「作る」ということに一生懸命になればなるほど商品はよりよくなり、考えて試せば試すほど経験値は上がる。製品ができたときには、自分も会社も成長し、そこまで極め続けた商品を、お客さんが喜んで使ってくれる。株式会社高池の「ものづくり」の仕組みは、古井さんが作りあげたものだ。

「お客さんが何を欲しがっていて、どんなことを要求しているか。それを見つけて作ってあげたい。」

そう語る古井さんに作ってもらえた製品はきっと最高のものであり、そんな「ものづくり」を考える古井さんの元で働いている社員の方は、とても幸せであると思う。

最後に・・・。今、ワクワク・ドキドキしていますか?

僕は基本的には自分がいやなこと・やらされていることが嫌いです。社員にもよく言うんです。「仕事は楽しんでやりなさい。」と。。。

例えば掃除をしていても「『掃除をする』という行為をやらされている意識で、
「つまらない!」と思うんじゃなくて、「机の上がピカピカになったら気持ちいいな」という意識に持っていきたい!という感覚を持った人間です。

だから、そういった意味ではずっと遊んでいられる人。「趣味はなんですか?」って言われて「仕事です。」って答える人間っていやな感じがするよね?「あいつ、仕事ばっかりして。。。」って思われる。でも、僕はまさにそうなのよ。すっごく楽しい、仕事が。

自分で考えて、みんなと考えて、こうじゃない、ああじゃないって言いながら仕事をしていることが僕のワクワクです。当然、いろいろな心配事もあるんだけどそれでもこの場所で、このメンバーと仕事をしていることが楽しいですね。ハラハラもするけどね。

取材日:2008年7月 (記事:中村)

古井誠さんのプロフィール

1954年(昭和29年)11月生まれ。今年54歳。
妻と子供5人(男4人、女1人)の7人家族。現在は、妻の父親と次男の4人暮らし。とはいえ、フィリピンにある協力会社から頻繁に研修生を受け入れ、にぎやかに過ごしている。

設計士として東京計数工業株式会社に入社、途中製造部へ移動。17年程の勤務の後、当時の仲間である中村(現在取締役)、菊池(現在取締役)と共に、1994年(平成6年)4月「高池」創業。7年後の2004年2月、株式会社高池を設立する。

インタビューコメント 〜古井さんとお会いして〜 eひと編集長 中村

「例えばそう」、「要するに」。お話をしていると、そう次から次へと思考が展開していく古井さん。自分の頭で考えることを日頃からされており、自分の思考を整理することがとても上手な方だと感じました。だからとても伝わりやすい。どう表現すれば、万人に同じレベルの理解が得られるのか、とても考えいらっしゃる方だと思いました。
出張と社内でのお打ち合せのお忙しい合間に、お時間をとっていただき、とても感謝しております。ありがとうございました。

インタビューコメント 〜古井さんとお会いして〜 eひとスタッフ 中野

私はとても慎重派。
じっくりと考え抜いてやっと1歩を踏み出す…そんな生き方をしてきました。
そしてそれが失敗しないためには一番大事だと信じていました。
そんな私は、古井社長の「とにかく失敗しろ」という言葉にとても衝撃を受けました。
「失敗をしてはいけない」という思いでガチガチになっていた私自身のしがらみから解放されて、とても気分が軽くなりました。

「失敗の数は経験値」そんな考えを持っている古井社長だからこそ、高池の社員さんは失敗を恐れず経験値を獲得して成長し、実力を存分に発揮できるのだと思いました。
古井社長こだわりの「スピード感」も社内のチームワークがあってこそ。
社員のみなさんが古井社長と同じ方向を向いているんです。

きっと今日から私の生き方が変わります。
ありがとうございました。

株式会社高池 会社情報

所在地

【本社・本社工場】 〒410-0816 静岡県沼津市住吉町1-10

【沼津南工場】 〒410-0106 静岡県沼津市志下113-1

【東京営業所】 〒164-0013 東京都中野区弥生町4-8-4

電話番号

【本社・本社工場】055-935-0507 【沼津南工場】055-935-0730

【東京営業所】03-6674-5665

FAX番号

【本社・本社工場】055-935-0511 【沼津南工場】055-935-0731

【東京営業所】03-6681-4691

事業内容

ワイヤーハーネス 設計製造販売  (http://haisen.jp/)

・電子機器 設計製造販売

・制御盤 設計製造販売

WEBサイト 株式会社高池  (http://www.n-takachi.com/)
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